メンタルヘルスに関する共同研究論文をリリースしました。

2021/08/26

ラグビー選手におけるこころの不調への対処行動の特徴 ~ジャパンラグビートップリーグ選手(当時)におけるメンタルフィットネスの調査からの報告~

2021年8月26日、日本ラグビーフットボール選手会(JRPA)と精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部、認知行動療法センター(NCNP)のグループは、ジャパンラグビートップリーグ 男性ラグビー選手(当時)への調査で、こころの不調への対処行動の特徴を明らかにした調査報告の論文をリリースいたしました。

論文はこちらからご覧になれます>*NCNPのサイトへリンク

同論文をリリースを受けて、JRPA会長の川村慎より以下の通りコメントいたします。


調査報告を受けて

日本ラグビーフットボール選手会は、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と協同でラグビー選手のメンタルフィットネス調査を行なっており、上記リンクの通りその調査報告がリリースされました。今回で二度目のリリースとなりますが、専門機関と共にトップカテゴリーのアスリートたちが自らのメンタルヘルスに関する調査を主導し、その結果をオープンにすることは前回が日本で初めてのことでした。こうした動きをアスリートが率先して行うことで多くの人たちが生きやすい社会の実現に貢献していきたいと思います。

今回の調査結果から選手会としての今後の課題が二つ見えてきたように思います。一つ目は「恒常的なサポート体制の必要性」です。”うつ状態の傾向が強いことと他者への相談を控えようと考える傾向との間に関連あり”ということは、普段からのサポートをチームや組織の中に構造的に組み込んでいく必要があると言えるのではないでしょうか。気軽にメンタルケアやその他世間話ができる環境が身近に整っていることが理想的であり、選手が安心して話せる空間及び相手と時間が普段から設定されているシステムを構築していく必要があると考えます。身体や怪我のケアと同じように予防的な意味も踏まえて常に心のケアにも注意が向けられる組織というのは今後スポーツ界だけでなく広く一般社会においても求められてくるものだと思います。

もう一つの課題は「アスリート自身がスキルとしてメンタルケアを認識すること」です。メンタルに関してはとかく精神論で語られることが多く、ポジティブで塗り固められた根性論がアスリートへの「強く逞しい」イメージや「困難を一人で乗り越えていく」といった強さの象徴としての存在を作り上げており、選手を苦しめているところがあります。もちろんこうしたイメージによるポジティブな影響もありますが、「アスリートはこうあるべきだ」という強迫観念に変わってしまうと逆効果となります。これはどういったアプローチが正しいのかという議論ではありません。どのような取り組み方をするにしてもアスリートが自分自身を知り、どういう時に最大の力を発揮できるのか理解することは最高のパフォーマンスを大舞台で見せる際には必要不可欠なのではないでしょうか。東京オリンピック・トランポリン女子に出場していた森ひかるさんは「技術だけがあってもダメなんだとすごく感じた」と記者に語っていましたがまさに技術の根底にあるのはメンタルケアであり、その土台をコントロールするスキルを身につけることは全てのアスリートにとって今後必須のスキルになってくると感じさせる内容のコメントでした。

選手会では以上二つの課題解決に対して継続的に取り組んでいき、「恒常的なサポート体制の実現」と「アスリートがメンタルケアをスキルとして認知する」ために必要な取り組みを行っていきたいと思っております。


日本ラグビーフットボール選手会 会長

川村 慎


(END 2021-08-26)